JLPT N1 · Graded reading
洪水大陸を呑む
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「なんでしょうね、山脈のむこうに二つ光っているものがありますね」
三四郎は、おじさんにたずねた。
「あれは月だよ」
器械の目盛をあわせていたおじさんは、かんたんに答えた。
「うそをいってらあ。月なら、ぼくだってわかりますよ。月が二つもあるわけがないじゃありませんか」
「ところが、それがあるんだよ。この光景にうそはない。一万年前には、地球のまわりを月が二つ、まわっていたんだね」
「ふーン。おどろいたなあ」
「二つの月のうち、その一つは、なくなった。見ていたまえ、やがてそれが見えるはずだ、一方の月がこわれて見えなくなるところがねえ」
From 海野十三, 洪水大陸を呑む via Aozora Bunko. Public domain; transcribed and proofread by Aozora Bunko volunteers.