JLPT N2 · Graded reading

幸福のはさみ

99% N2 vocabulary · 309 characters · 1 word to look up

正吉は、まだお母さんが、ほんとうに死んでしまわれたとは、どうしても信じることができませんでした。

しかし、お母さんが、もうこの家にいられなくなってから幾日もたちました。正吉はその間、毎日お母さんのことを思い出しては、さびしい日を送りました。彼は子供心にも、もうお母さんは死んでしまわれたので、けっしてふたたび帰ってこられないと思いながら、やはりまったく死んでしまわれたとは、どうしても、思うことができなかったのです。あのやさしいお母さんが、この世界のどこにも、まったくいられないと信じたら、そして、もうどんなことをしても、二度と見ることができないと信じたら、彼は、悲しさのあまり、胸が張り裂けてしまうからでありました。

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  • 張り裂けるはりさけるno gloss yet

From 小川未明, 幸福のはさみ via Aozora Bunko. Public domain; transcribed and proofread by Aozora Bunko volunteers.