JLPT N3 · Graded reading

幾年もたった後

99% N3 vocabulary · 326 characters · 1 word to look up

父親は、子供の手を引いて、ゆるゆると道の上を歩いていきました。そして、父親は、自分も、こんなように子供の時分があったのだということを、ふと心の中に思い出したのであります。

「やはり自分もこんなように、歩いたのであろう。やはり自分の目にも、こんなように、映ったものはなんでも美しく見えたことがあったのであろう。」と、父親は思ったのでありました。

しかし、もう、いまとなっては、そんな昔のことをすっかり忘れてしまいました。これは、ひとり、この父親ばかりにかぎったことではないでありましょう。みんな人間というものは一度経験したことも年をたつにつれて、だんだんと忘れてしまうものです。そして、もう一度それを知りたいと思っても思い出すことができないのであります。

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From 小川未明, 幾年もたった後 via Aozora Bunko. Public domain; transcribed and proofread by Aozora Bunko volunteers.