JLPT N1 · Graded reading

時計のない村

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「俺たちには、もう時間がないのだ。」といって、村の相談があっても、時刻がつねにまとまりませんでした。

甲の組は、さすがに、自分たちのほうの時計は狂わない正しい時計だと、いよいよその時計のありがたみを感じたわけです。こうなれば、乙の組のものも、こちらにしたがわなければならぬと思っていました。それで、相談があるときは、

「午後六時より。」というように、時間を定めて、乙のほうへ通知をいたしました。けれど、時計を持たなくなった乙のほうは、六時がいつであるかわかりません。こんなことで、いつも相談が、はかどりませんでした。

From 小川未明, 時計のない村 via Aozora Bunko. Public domain; transcribed and proofread by Aozora Bunko volunteers.